阿部美穂子の韓国Pick up!:スペースアルク
 

2012年10月26日

TITLE:ウルサンの「イモ」

121026_1.jpg韓国語で「イモ」(=이모)とは、母の姉妹に対して子から呼ぶ場合の呼称ですが、普段は母と親しい友人たちにも親しみを込めて「イモ」という呼び方をします。ですから姉妹ではないけれど、私よりちょうど一回り上のオンニも、息子のヂヒョにとっては、「イモ」になるわけです。

子育て中は、分からないことや不安になることも多々あります。そんな時、周囲の人に頼れることは、何より、オンマの精神状態にとってもいいことです。家族の協力はもちろん、頼れるご近所さんに出会えたら、本当に幸せです。オンニとは、ウルサンに移り住んで4ヶ月ほどしたころに出会いました。

日本で生まれ育ったオンニは韓国に帰国した当初は韓国語より日本語のほうが得意だったそう。3人の子どもを育て、10年以上ウルサンに住んでいる彼女は、今では韓国語ももちろん流暢で、よく世話を焼いてくれるところを見ると、やはり韓国人気質もばっちり兼ね備えているようでした。そんな彼女だから、何も知らない、誰も知らない新しい場所で、初めての子育てをする私にとって、最高の話相手になってくれました。日本と韓国を体験し、両国を痛いほどによく知っているオンニから聞く話は、いつも心の奥底に響く言葉達がいっぱいでした。

「昔の私によく似ている。あまり頑張りすぎずにね」と言っては「パラム セロ カジャ=風に当たりに行こう(気分転換に行こう)」とよく海やカフェに誘い出してくれました。韓国でのアッパのサッカー生活は、忙しい上に寮生活も多く、出産後まだ運転を始めていなかった私は行動範囲も狭かったので、オンニからのラブコールは本当にうれしかったです。

ヂヒョがトマトが大好きになったきっかけも、オンニのある行動からでした。韓国でハンジョンシク(한정식=韓定食)を食べた時のこと。キムチやコチュジャンに和えた辛いオムク(어묵=さつま揚げ)など、たくさんの種類のおかずが並ぶものの、まだ8カ月のヂヒョに食べさせられるものがほとんどありません。サラダに飾り程度にのっていたトマトの皮をむいて、ヂヒョに食べさせたオンニ。おかずはおかわり自由な韓国の外食ルールにのっとって、何度「チュセヨ=ください」をしたでしょうか? この日から、ヂヒョの毎食のメニューにはトマトが加わりました。

121026_2.jpgそれから、オンニの家へ遊びにでかけては、ヂヒョにサンゲタン風の鶏粥を作ってくれたり、半分に切ったりんごにスプーンをあててこすると、すりおろし状態に!(外食にも便利技!)そして口に運んでくれたり、と韓国で育てていく上での様々なアイディアを教えてもらいました。

さらにこの時は、ヂヒョがなんでも口に入れてしまう時期だったので、冷凍庫にあったするめを握らせたイモ。すぐに気に入ったヂヒョは、大量のよだれを流しながらカミカミしていました。「韓国では歯が強くなるから、と歯固め変わりにするめをくわえさせたりするのよ」。たくさん学び、たくさん励まされた日々......。

そして、出会ったその年に日本へ引っ越しすることになってしまった私たち。オンニとのしばしのお別れを悲しむ間もないまま、荷物の整理に忙しい年末になると分かった12月1日のこと、私が1年ぶりに消化不良で倒れた時にも「ヂヒョと一緒にうちにおいで」と言ってくれたのでした。ヂヒョもちょうど4日前にジャンヨム(장염=腸炎)になり、回復したばかりだったので、願ってもないうれしい誘いでした。ヂヒョはこの日、イモと一緒に寝ました。もしあの時、オンニがいなかったら......。感謝してもしきれない、家族......母のような、姉のような、本当にかけがえのない存在のオンニです。

121026_3.jpg